プロフィール
岩倉昂史|株式会社ヒトノハ 代表取締役
1993年、大阪府出身。京田辺シュタイナー学校を卒業後、カフェ経営、会社勤務を経て、2015年に和歌山県古座川町へ移住。2020年、同地にて株式会社ヒトノハを創業。社内ではプロデューサー、ディレクターを務める。クライアントの言語化しきれていない事業に対する思いや課題を、浮き彫りにし、「何を制作するのか」「何を表現するのか」の設計力に定評がある。株式会社ヒトノハは、和歌山県古座川町・那智勝浦町にあるコンサルティング・デザイン制作会社。WEBサイトやパンフレット、商品パッケージのデザインに加え、まちづくりや経営等のコンサルティングも行う。nojimokuとは2023年の代表交代に伴うCI(コーポレートアイデンティティ)設計やWEBサイトリニューアル、名刺やパンフレット等の制作を行っている。
ーーどのようにnojimokuさんと知り合ったのか教えて下さい。
岩倉 2022年の初夏くらいだったと思うんですが、WEBリニューアルについてご相談のメールをいただいて、お話を伺いに熊野まで出向いたのがnojimokuさんと知り合った最初。訪問したときには、野地さん(※野地伸卓 代表取締役)とまきさん(野地麻貴 営業・広報担当)に出迎えていただいて。しっかりした長い木の椅子に座って、林業や製材全体の状況や、その中でのnojimokuの立ち位置について教えていただいたのを覚えています。
ーーそのときは、どんな印象だったんですか?
岩倉 まっさらなところから考えているというか。nojimokuのベースはあるんだけど、そこから改めて考え直したいという姿勢が印象的でした。今はこれが課題だからこれだけ解決してくださいという話じゃなくて、大きな視点からこれからどうなっていったらいいかも一緒に考えたい、という感じですね。あと、僕らの持ってる能力とかノウハウとかをもっとみたい、ヒトノハをnojimokuに掛け算してほしいっていうような雰囲気も印象的でした。あなたたちのエッセンスの籠もった提案をしてほしいと言われているように感じて、おもしろいけど超プレッシャーだなと思った印象があります。なんだか、試されてる感じもするじゃないですか(笑)。でもそれがnojimokuさんとのやりとりのおもしろさでもあって、よしやってやろうと思わせてくれる、そんなコミュニケーションをしてくる人たちだな、と感じました。その印象は、今でも変わりません。
ーー一番強く感じたエピソードはありますか?
岩倉 案件の打ち合わせを進める中で、ひとつの課題に対して複数の提案をしてほしいと言ってくださったことですかね。どんなものがでてくるんだろう、と無邪気に楽しみにしながら試されているように感じて、毎回緊張感がありました。提案の中でも、参考で示した他のクライアントさんの事例より、まず僕たちヒトノハがどんなクリエイティブができるチームなのかというところに興味持ってくれたんですよね。例えばアニメーションできるメンバーがいるっていう話をしたら「おもしろい」って食いついてくれて、そのままWEBの導入映像もアニメーションで作ることになったりしました。
とくにnojimokuさんが、今回のリニューアルをまっさらなところから考えているなと感じたのは、CI設計の過程でnojimokuがこれからの時代をどう進んでいくかを話をしてる時ですね。そこで、製材所はこうじゃないといけないとか、そういう話はあんまりでなくて、自然に、熊野や製材所に対して何ができるかとか、これからの時代がどうあればいいか、ということを主軸に議論が進んだんです。そこでnojimokuさんはかなり大きな目線を持って自分たちの未来を考えようとしてるんやな、と強く感じました。
僕たちはより良いものをつくるためにも、いつもこういう話の軸からクライアントさんとの議論に入りたいと思ってるんですが、今回みなさんがめちゃくちゃ自然な感じでそこに乗っかってくれて、かなり深く話ができたと思います。おかげで毎回、ミーティングが3時間を超えたり、長く話しても話しきらないくらいアイディアが出たりもしました(笑)。今回は根っこになる部分のアイデンティティを設計が主で、枝葉のアイデアの実現はこれからなので、今後ともぜに一緒に取り組んでいきたいですね。
ーー一緒に仕事をした人間としてnojimokuらしさをあげるならどういうところですか?
岩倉 最初のCI設計のミーティングはまきさんと伸卓さん、そして良成さん(※野地良成 専務取締役)と一緒に始まったんですが、それぞれの個性が全然違っていたんですよね。それがまずおもしろかった。それに、みんなこちらが投げかけたことを、真剣に考えてすぐ返してくれるし、考えつかないところは持ち帰って深く考えてくれるんです。とにかくnojimokuの未来や製品に向き合う姿勢がみんなまっすぐでした。なので僕は、その個性とまっすぐなところが、nojimokuさんらしさなのかなって思っています。もちろん、これはそこにいた3人の話ではあるんですけど。あと、伸卓さんはすごく未来とか地域見てるし、まきさんはすごくお客さん見てるし、良成さんは木や工場の人を見てるし、なんだかすごいバランスのいいチームなんやなとも思いました。
ーーデザイン会社の目から見てnojimokuはどういう会社ですか?
岩倉 ふだんいただく依頼のメールにはホームページ作ってほしいということだけが記載されていることも多いんですが、nojimokuさんは「会社の未来の方向性も考えながら、その上でホームページの依頼とかしたい」みたいなことを言ってくれたんですよね。そういうオーダーをくれるところって、やっぱりあんまりいなくて。初めましての関係性だとなおさらです。でもはじめからそれを匂わすようなメールの文面やったので、会う前からnojimokuさんはちょっと違うんかなとワクワクしていました。
実際に会って打ち合わせを重ねていく中で分かってきたのは、伸卓さんも、まきさんも、良成さんも、それぞれの役割をそれぞれの言葉でしっかり言える人たちだということです。なんだか一人が強力に統率してるわけじゃなく、それぞれが立ちながらしっかり繋がっている組織なんだなあ、と。完全なボトムアップではないんだけれど、めちゃくちゃピラミッドになっているわけでもない。トップの人たちはいるんだけれど、その人たちがちゃんと調和してるというか、頼り合ってるというか。
あとはやっぱり、自分たちはもちろん、熊野や木自体とかの価値を高めたいと思ってはるのが、すごく大きくて。作業をこなすとか、仕事が増えるとかじゃなくて、価値を高めるためにどう動くのかっていう。それは、地方の中では、やっぱり珍しいかなと思うんです。だから制作物をつくるだけじゃなくて、その先に何があるかっていうところの話からできたりとか。同じ地方で仕事をしている会社の目線から見て、こういう姿勢をもった会社は地域をリードしていくと思っているし、僕らも期待に応えて一緒にリードしていけるようにならなあかんなと思いましたね。
ーーほかに印象的だった出来事はありますか?
岩倉 うーん、やっぱり写真の撮影の時、エヴァンゲリオンの碇ゲンドウのポーズとか尾崎豊のポーズをやってる時の伸卓さんのノリの良さですね。なんか、ちゃんと没頭してその場にいることができるというか。「ちょっと恥ずかしいわ」とか「言うたけども」とかじゃなくて、場に全力を注ぎ込める。熊野サミットの時のプレゼンのときも吉幾三歌ってましたけど、それも全力歌ってましたよね。それがとても印象的でした。
あと、企業価値を高めるっていう姿勢が一番上にあるから、全力で吸収してやろうっていう精神がすごいありますよね。どこからでも学んでやろう、みたいな。だから、全然ドヤっている感じがしない。これはすごく感じているんですよ。nojimokuらしいのかわからないですけど、その目的に対して愚直というか。
あ、あとはやっぱりユーモアですね。関西人なんかなあ。お客さんや熊野に幸せになってもらうこととか、企業の価値を高めたいということはベースに強く感じているけれど、そのプロセスはやっぱりユーモアを持ってやりたいっていうのがnojimokuさんにはありますよね。その態度は、その辺の企業全部にあるわけじゃないというか。もちろんみんな楽しい方がいいと思ってるかもしないけど、それを具体的にやってくるところがnojimokuさんですよね。飲み会の席で、冗談で尾崎豊のハガキを作りたいっていう人はいるけど、ほんまに撮る人はなかなかいない。まして、ギターとマイクスタンド持ってきて、そのシーンを撮るとか。
ーーnojimokuさんに今後期待すること、一緒にやっていきたいことはありますか?
岩倉 林業界というと広すぎるかもしれないけど、製材界の話をもっと聞かせていただきたいですね。あとこの地域や、広く日本の山の産業をリードしていってほしいですし、この地域のこともリードしていってほしいです。個性とまっすぐさ、それにプラスユーモアで、駆け抜けてほしいなと思いますね。
僕たちも、 僕たちの個性を使って、そのプロセスに関わらせていただければと思います。うーん例えば、熊野地方、紀伊半島の山の価値を10倍くらいにしたいですね。10倍というのは比喩ですが、nojimokuさんが地域や山の産業をリードしていく手段として、まず紀伊半島の山の価値を上げるという取り組みを一緒にやりたいです。それは新しい製品を開発することかもしれないし、川上から川下の商量を増やすことかもしれないし、nojimokuさんが協業する仲間とより良いプロダクトをつくれるようにお手伝いすることかもしれないし。まだ形は見えてないんですが、ぜひ、一緒にこれからも仕事をさせていただければと思っています。
今回nojimokuさんと仕事をさせていただく中で、製材や林業のおもしろさはもちろん、木のある暮らしの良さをすごく感じたんです。これから僕たちもオフィスを改装する予定なんですが、そこにもできるだけ木を使っていきたいと思っています。できれば全部nojimokuさんの木で……。そのためにも、いっぱい仕事して稼がないといけないので、ぜひ今後もお仕事をさせてください(笑)。