STORY 01
開発の経緯

以前nojimokuさんと共同で開発した小幅板風羽目板は、北欧の自然環境から生まれた表現方法を日本の桧に持ち込んだものでした。それが一定数の共感を得られることが分かった今、日本の木の代表である桧を、改めて日本風の表現で再解釈できないだろうかという考えが、ふつふつと湧いてきました。
桧はそのまま羽目板として使えば和風の仕上がりになるわけですが、住宅に使うには上品になりすぎる。もうひとつ手を加えることで、ただの板ではない日本風の何かを表現できないか?そこで思いついたのが『格子』です。古い街並みの軒下に整然と並ぶ窓の格子のように、繊細で規則正しいさまを板で表現できないか?そこでnojimokuさんとの新しい羽目板開発プロジェクトがはじまりました。
格子を表現するにはさらに巾の大きな溝を掘り、細い棒が並んでいる様子を再現する必要があります。その溝は深ければ深いほど格子にみえるわけですが、薄い板に掘れる溝の深さには限界があります。まず何ミリの深さの溝が最適なのか?
また普通に溝を掘ってしまうと、塗装の際に溝の底の隅に塗料溜まりができるため、そこには微妙なRを付けることにしました。ただ格子としての面はしっかり出るように山の部分は面を出してソリッドに仕上げることにしました。そして、どのくらいの幅で溝を入れるのが一番格子にみえるのか、試行錯誤は続きました。

開発で一番難しかったのが、板同士の継手である実(さね)をどう作るかという点。溝をなるべく深く掘りつつ、その溝が綺麗に連続するようにみせる必要があり、その連続性と実の結合性を両立させつつ、しっかりした強度をどう確保するか、もっとも気を使った部分です。
そんな問題点をクリアしながら試作品を作りつつ、ようやく完成したのが格子風羽目板『こなみいた』です。
ネーミングは小さな『波』を描くような断面から考えました。ちなみに波はフィンランド語で『Aalto』。小幅板風羽目板のデザインの参考にさせてもらったアルヴァ・アアルトへのリスペクトも込めて名付けています。
格子巾は11mm(割付20)と26mm(割付35)の二種類。11mmの方は、スパンドレルのような繊細な仕上がりとなっていて、室内の天井に使ってもいいし、軒裏などに使っても深い陰影が出て和風よりもモダンでシャープな仕上がりになると思います。26mmは窓格子などでも使われる細いながらもしっかりとした印象を与える巾としました。天井のほか、壁に貼ることで格子仕上げのようなリズミカルな仕上がりを楽しむこともできそうです。
日本の木の代表ともいえる桧を、日本の住まいの工夫の一つである格子のようにデザインした『こなみいた』。デザインした私自身、自分の設計物件で使うのが楽しみ。貼り方によって色々な表現ができると思います。皆さんのアイデアで多彩な表現がされることを期待しつつリリースさせて頂きます。
