コンセプト
「外構を増築する」
3世代に住み継がれてきた築55年RC住宅の増築と改修の計画。
工場やアパート、交通量の多い裏道に面した雑多な周辺環境や、大胆な改修が不向きな壁式RC構造という状況の中で、周辺から守ると同時に開き、家全体を開放的にする増築のあり方を考えた末、南面の外構を整えるように増築を考えていくことにした。
RC棟南面を、駐車場を外して間口いっぱいに木塀でぐるりと囲み、西側半分を庭、東側をダイニングキッチンとする。ダイニングは4本の壁柱で天井が高く持ち上げられた開放的な場所とし、キッチンのうえに住空間を包み込むようなL型の勾配屋根を架けた。
勾配屋根と木塀は周辺環境から開く・閉じるべき方向を見定め、寸法を決定。既存バルコニーは一部解体し、その端部を既存と同断面のR形状でつくり、造形の独立性を強調した。また、既設のバルコニーと新設の木塀、勾配屋根、壁柱が同等の存在感になるように、それぞれのスケールと造形、仕上げを検討した。
RC棟南側のリビングや個室から外を見ると、外構に計画された部位の一部が断片的に見えて全体性を感じられる。堅牢な躯体で各部屋の繋がりが無く閉塞的だった家を柔らかく解きほぐし、光や家族の気配を奥まで導く明るい環境をつくるための、外構のような増築のあり方を目指した。
(鈴木隆介一級建築士事務所/鈴木隆介)