2026.02.27 Fri

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第2話 製材一筋26年のベテラン職人

#nojimokuで働くってたいへんですよね? ノンフィクション~社員たちの本音~, #トピック

前回、社長へのインタビューで「社員それぞれが楽しめるポイントを見つけることで、満足感につながっている」というお話がありました。

でも言ってみれば、それは経営者の視点。
現場で働く方々が本当にそう思っているとは限りません。

ならば次は現場の方へインタビューをしよう!
ということで社長からバトンを引き継いだのは、製材一筋26年、定年を迎えてもなお再雇用として第一線で働き続ける、ベテラン職人の赤坂さんです。

小さいころから木に親しみ、仕事においても木と向き合い続けてきた赤坂さんに、仕事の奥深さとやりがい、そしてこれからの想いを伺いました。

一人前になるまで5年!製材の現場と職人の仕事

――はじめに、現在のお仕事についてお聞かせください。

製材を担当しており、加工板や構造材を挽く仕事をしています。
昨年で定年を迎えましたが、再雇用で働き続け今年で26年目になりました。

製材見習いの相方が二人いるのですが、その子たちが独り立ちできるまでは仕事を続けたいと考えています。

――職人は一人前になるまで時間がかかるイメージがあります。実際、どれぐらいの時間がかかるものなのでしょうか?

製材する材料にもよるため、まず木を見ることが大事です。
今見ている見習いの子は、大体1年半ほど経ったところでしょうか。
基本的な機械の扱いは習得できていて、単純な挽き方であれば自分でもできるレベルです。

挽き方も都度変わるので、その時々で練習しながら実践しています。
スキルが伴う特殊加工は、これからですね。全部で5年はかかるかなと思います。

私も入社してから5〜6年は、さまざまな材料を挽いて経験を積ませてもらいました。
当時の社長(現在の会長)が本当に製材好きなので、横に付いて作業を見てくださいました。

――挽き方も都度変わるとのことですが、特に難しい材料は何でしょうか?

曲がり丸太ですね。あと太い木は歩留まりを考えないといけないので難しいです。

――製材のお仕事は「重いものを一日中扱う」というイメージがあるのですが、実際の木材はどれぐらいの重さなのでしょうか?

太さにもよりますが、丸太自体は300~400kg程度です。
ただ、運ぶのも回すのもすべて機械で行うため、実際のところ力はそこまでいらないです。

一方で、出来上がったものを受け取る相方は自分で持たないといけないので、大変です。とはいえ、慣れれば力を入れずに扱えるようになります。
現場の工夫で、7割ぐらいはラクになるというイメージですね。

やっぱり「木が好き」。難しい材料でも乗り越えられる秘訣とは

――社長からは「災害が発生すると、作業が止まる大変さがある」と伺いました。その一方で「宣伝にもなる」という話もありましたが、実際現場レベルではどのように感じていらっしゃいますか?

確かに、以前発生した災害時は大変でしたね。会社前の道が流されて通れず、途中から歩いて出社したこともありました。
周辺の街灯も消えているため、残業した日には懐中電灯をつけて真っ暗な道を帰ることも。
また、トラックが入れなかったため、柱や梁といった大きな材料はバケツリレーのように人力で運び出していました。

道が開通するまでには2年ほどかかり、何とか工夫しながら乗り切ったという感じです。忘れられない思い出ですね。

――社長から伺った話とだいぶ温度差があります…!とはいえ、そんな大変な中でも26年続けてこられたのは、仕事にやりがいや楽しさがあったからなのでしょうか?

もともと、父が林業で木を切り出す仕事をしていて、私も若いころからそれを手伝っていました。
一度は離れましたが、やっぱり「木が好きだった」んですよね。

当時父親が営んでいた小さな製材所に入り、一緒に仕事をしていました。
その後、nojimokuへ入社したという流れです。

――小さなころからずっと、木を扱う人生を歩んでこられたんですね。なぜそこまで木の仕事を続けられるのでしょうか?

丸太を見て「この木はこう取れるな」とか「これは良い木か、悪い木か」と思い描きながら木を挽き、それが狙い通りに仕上がったときが一番面白いんですよ。

――季節によって、木の扱いやすさに違いはあるのでしょうか。

冬に切った木は、虫もつきにくく扱いやすいです。逆に夏は、虫や傷みが出やすくて難しいです。
そんな時は、材料自体を変えていくこともあります。

――これまで受けてきた仕事の中で、一番大変だったものは何ですか?

長野のお寺の鐘楼材ですね。梁や構造材の注文で、すべて桧のムジ指定(※1)でした。
特に破風(※2)が曲がった形をしているため、それに合わせて加工するのにとても苦労しました。

※1 ムジ:木材市場での等級・仕上げの呼び方。「無地(ムジ)」の略で、節(ふし)がない、またはほとんど見られない、木目がきれいに通った材を指す。
※2 破風:日本建築の屋根の妻側(三角形になっている側面)に取り付けられる板や部材の名称。屋根の端を覆うことで、構造材や垂木の切り口が外から見えないようにする役割がある。

加工したいものに合った形の丸太があれば良いのですが、ちょうどその時に適切な丸太がないと一度に挽くことができません。
それでも欲しい材料が取れるまで、挽き続ける必要があります。
実際この仕事では、完成までに2週間はかかりました。

――途中で嫌になることはありませんか?

ないですし、むしろ楽しかったですね。
思い通りに材料が取れたときなんかは、喜びも大きいです。
すべては組み合わせで、どうすれば「無駄を出さずに材料を取れるか」を考えながら木を挽いていくのが楽しいですね。

――赤坂さんは、木のどんなところが好きですか?

木には一つひとつの良さ・悪さがあると思っていて、それを見極めるのが好きなのかもしれません。
子どものころから木の家で育ったので、その良さもわかっていますし、木を触るのも好きですね。

職人に必要なのは、相手のことを考えて行動できる主体性

――製材のお仕事に向いているのは、どんな人だと思いますか?

意欲や向上心のある人だと思います。加えて、一人で完結する仕事ではないため、協調性も欠かせません。

私もこの仕事を長くやっているので、その人が合っているかどうかは一日の働きぶりを見たら大体わかりますよ。

――仕事を続けていくうえで、大切にすべき心構えは何でしょうか?

先ほども触れましたが、やはり「意欲」ですね。自分から主体的に取り組めることが大切です。

どうしても職人仕事なので、言葉で伝えるのが難しい部分も多いです。
そのため、動きをよく観察して真似ることが求められます。

相手が何をしようとしているのかを考え、言われなくても行動できること。
そんな「阿吽の呼吸」で動けることが、仕事を続けていくうえで大切だと思います。

――「見る」「聞く」ということをとても大切にされているなと感じます。だからこそ災害のような有事の時も、皆さんで呼吸をそろえて作業に当たれるのかもしれませんね。私のようなオフィスワーカーでも務まるでしょうか?

慣れればできると思いますよ。
周りを見ていると、1ヶ月ぐらいはしんどそうにしていますが、みんな徐々に慣れていますね。

若い子たちを見ていると「楽しそうにやっているな」と感じます。
表情も明るくて、動きも軽やかですし、見ていると自分の昔を思い出しますね。

良いものを届けたい。その責任感が現場を支えている

――これまで長く続けてこられて、「仕事をやめたい」と思ったことはありますか?

ありませんね。身体がしんどいときもありますが、それも振り返れば楽しかったと思えます。
逆に言うと「楽しむしかない」といったところでしょうか。

災害などで大変な時もありますが、それでも「良いものをお客さんにきっちり届けること」が私たちの仕事だと考えています。

――すごくプロ意識を感じて、私も気持ちが引き締まります。

それでもやっぱり暑いのは大変ですよ。今年は特に暑かった。
工場は天井が鉄板なので、結構蒸し暑くなるんです。
後ろで大きな扇風機を回したり、ひたすら水を飲んだりして乗り切りました。

――そういった時に厳しい環境下で仕事を続けてきて、地元である熊野を離れたいと思ったことはありませんか?

一度もありません。
たまに出張で大阪や名古屋へ行くこともあるんですが、すぐに帰りたくなります。笑
朝目覚めたときの空気が違うんですよ。

熊野の方が空気はきれいだと思いますし、何より朝目覚めたときに山が見えるのが好きですね。

――普段プライベートでは山へ登ったり、釣りをしたりして過ごすのでしょうか。

いや、山登りも釣りも、全くしません。
山は若いころ数え切れないほど登ったので。笑

今はお酒とボーリングですね。
ボーリングはマイボールを持つほど好きで、月に6回は新宮市にあるお店まで30分かけて通っています。

――あえて全く違う趣味を持つことで、うまくバランスを取れているのかもしれませんね!最後に、仕事におけるこれからの目標があればお聞かせください。

もっと今よりもうまく製材できるようになりたいです。
引退するまでは、探究心を持ち続けて仕事に向き合いたいと考えています。

――その姿勢が、後進の方への刺激にもなると思います。ぜひ長く続けてください!

まとめ

26年にわたって木と向き合い続け、製材の現場を支えてきた赤坂さん。

見習いの育成や災害時の苦労を経ても「楽しむしかない」と語る姿からは、仕事への誇りと木への深い愛情が感じられました。

製材の現場では、一人前になるまでに5年という歳月をかけ、木を見る目や仲間との呼吸を磨きながら技術を培っていきます。

熊野の自然と共に歩み、「良いものをお客さまに届けたい」という責任感が、現場を支えてきました。
木を扱う仕事には厳しさもありますが、それ以上に深い喜びがあります。

本連載では、今後も「木と生きる人々」の言葉を通して、その魅力とリアルをお伝えしていきます。

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