僕の好きなバンドに、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTという存在がいる。
そのバンドに「世界の終わり」という曲がある。
世界の終わりはそこで待ってると
思い出したように君は笑い出す
初めてこの歌詞を聞いたとき、胸に刺さるものがあった。
「笑い出す」というのが妙にリアルに感じ、終わりを前にして人は泣くのではなく、確かに笑ってしまうのかもしれないなと、おぉって思った記憶がある。
少し前のことである。
工場で、ベテランの職人がある丸太に向かって黙々と加工を続けていた。
顧客からの品質要求は高く、職人はその期待に応えようと、手を動かし続けていた。
そのとき、彼は僕にこう言った。
「社長、これ使えるのに、捨てるしかないんか!? もったいないやろ」
その言葉を聞いて、僕はしばらく何も言えなかった。

考えてみれば、一本の木が丸太になるまでに、約80年という時間がかかる。
80年である。
僕がまだ生まれていないころから、その木は山に根を張り、雨を吸い、冬を越え、ひたすら天へ向かって伸び続けてきた。
そうして、やっと切り出された丸太が製材所へやってくる。
そして、その丸太が木材として世に出られる割合は、全体のたった30%ほどに過ぎない。
残りの70%は、製造の過程で捨てられていく。
それだけでも十分すぎるほど「もったいない」話であるのに、さらに品質基準を上げると、その30%がさらに削られていくのだ。
「もっといいものを」という言葉は、誰でも簡単に口にできる。
しかしその裏で何が起きているかを、どれほどの人が知っているだろうか。
品質を上げるということは、「不良」と呼ばれるものの線引きを上げるということだ。
それはつまり、昨日まで普通に使われていたものが、今日からはゴミ箱行きになるということでもある。
毎日丸太と向き合い、木の声を聞いてきた職人たちの心はそのたびにズタズタに引き裂かれる。
それでも、お客様の要望に応えなければならない。
だから彼らは、泣く泣く木材を捨て続けているのだ。
これは誰かが悪いという話ではない。
消費者は、より良いものを求めて当然である。
メーカーは、品質を高めるのが責務だ。
市場も、資本主義の論理も、誰も間違ってはいない。
ただ、
屍の上に成り立つ経済成長が、長続きするとはどうしても思えないのだ。

僕は若いころ、ロックバンドをやっていた。
毎日ギターをかき鳴らし、魂の叫びをメロディに乗せてがむしゃらに音楽と格闘していた。
あの頃の自分には、恥ずかしいくらい余計なものがなかった。
ただ伝えたいことがあって、ただそれを全力でぶつけていた。
会社を経営するようになって、社員を養う責任が生まれ、当然ながら倫理的に、慎重に、理性的に振る舞うことが求められるようになった。
それは正しいことだし、今もその考え方は変わらない。
でも、気づいたら大事なものを失いかけていた気がする。
がむしゃらさ、である。
林業というのは、長い時間をかける業(なりわい)だ。
今だけうまくいけばいいという発想では、最初から話にならない。
先人が80年かけて育てた木を、僕たちは引き継いで、次の世代へ届ける。
その連鎖が途切れたとき、この世界は本当に終わる。
そこで僕は、AMASUNAというプロジェクトを立ち上げた。
その名前には「余さず使い切る」という意味を込めている。
丸太を、木を、余すことなく使い切る。
その言葉の中に、僕たちがこの業(なりわい)で守りたいものが、ぜんぶ詰まっている気がした。

木とは、鉄やコンクリートとは違う素材だ。
一本一本、形も色も香りも違う。
規格に収まらない個性が、木の面白さそのものである。
その個性を「不良」と呼んで捨てるのか。
それとも、その個性を「魅力」と呼んで活かすのか。
そこに必要なのは、クリエイティブな力だと僕は思う。
規格外のものを規格外のまま美しく使いこなす、想像力と技術の力。
AMASUNAはその力を持って、この問題に挑んでいくプロジェクトだ。
このブログでは、これからAMASUNAの活動をひとつひとつ記録していくつもりだ。
設計者、工務店、材木屋、そして施主まで。
さまざまな立場の人たちと一緒になって考え、生まれた作品を、動いたプロジェクトを、ここから発信していきたい。
バンドと同じだと思っている。
ギタリストがいて、ベースがいて、ドラムがいて、ボーカルがいる。
それぞれが違う楽器を持ち、違う音を出しながら、ひとつの音楽を作り上げていく。
AMASUNAもそういうプロジェクトにしたい。
みんなで木材を奏でるように、余すことなく使い切る世界を、一緒につくっていきたいのだ。

「世界の終わりはそこで待ってると、思い出したように君は笑い出す」
この歌詞を、今の僕は少し違う意味で受け取っている。
終わりを笑えるのは、その先に始まりを信じているからじゃないかと。
現代社会における経済成長一辺倒といった価値観により、林業の世界が終わってしまうかもしれない。
それが自然の摂理だとするのならば仕方のないことかもしれないが、僕は抗いたい。
だからこそAMASUNAを始めるのだ。
世界の終わりと、AMASUNAの始まり。
それは、たぶん同じ場所にあるのだと思う。
最後に。
このブログを読んで、何かがざわついた人がいれば。
「面白そうだな」と思った設計者や工務店の方がいれば。
あるいは、家を建てようとしていて、この話に共感した施主の方がいれば。
ぜひ、一緒にやろう。
AMASUNAは常にメンバーを募集している。
ハイセンスな設計や、超絶技巧の加工技術は必要ない。
ただ、魂が動いているなら、それで十分。
あなたは立派なAMASUNAメンバーだ。
製材所での仕事をいかにして”おもしろく”するか、それで事業が成り立つのかを日々実験している
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