nojimokuさんに講演で熊野に呼んでもらった際に商品開発の相談を受け、原木市場や工場を見学しながら8割が杉である日本の山と比べ、熊野は半分が桧であり材料が豊富なことなどを聞き、熊野の桧を使った新商品の開発が始まりました。
桧といえば和風建築のイメージで少し上品すぎて使いにくいというのが最初の印象。ちょうどその頃北欧の建築を見て回る機会があり、山に大きな木が育つ日本と、薄い土壌に細い木の森が広がる北欧との森林文化の違いを現地で体感しました。
フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトのマイレア邸は細い板を並べた天井が印象的ですが、写真集で見ていたそれがデザインだけでなく自然環境に即したものであることを知ることができたのです。
大径木や幅広の板が使われてきた日本と、細い木をうまく使う北欧。建築文化の違いは森から生まれたわけですが、アアルトは日本建築に深い興味を持って引戸や障子に似た建具などを使ったり、日本の建築家はアアルトの建築に影響を受けていたりするのがとても興味深いところです。サウナの流行に見られるように双方には共通する価値観が根底にきっとあるはず。
そこで、日本の桧の良さを活かしつつ、北欧の小幅板のようなリズミカルな質感を持たせたいと考え、様々な検討と試作品の作成を経て桧の小幅板風羽目板は生まれました。
SEASON01
STORY 01
nojimokuのこんな風にできたら:
桧の「和」のイメージが強すぎて、現代の住宅には使いづらい。和室以外でも使ってもらえるシーンが増やせたら…。
お客様のこんな風にできたら:
小幅の板を使ってみたい。でも材料費も張り手間もかかり、コストが高くなってしまうので、何か良い方法はないか…。
STORY 02
お客様のニーズをもとに考え、既存の羽目板の表面にスリットを入れてみたらどうだろう?というアイデアが生まれました。マスタープランの小谷さんに相談したところ、北欧の巨匠建築家、アルヴァ・アアルトがマイレア邸やカレ邸で天井に使っている小幅板をオマージュしたデザインを提案していただきました。
溝巾を変えたり、面取りの大きさを検討したり、何パターンも試作品を作り、試行錯誤の末にたどり着いたカタチ。【小幅板風羽目板】の誕生です。
STORY 03
いよいよ、小幅板風羽目板の使われた空間ができあがりました。和っぽさをいい意味で抑えた、可愛らしい表情に。小谷様も「実際に使ってみると大人しかった木目にリズムや動きが生まれるのが楽しく、溝加工のおかげか桧の香りも強く感じることができた」との感想をいただきました。
住まわれる時間とともに、飴色に変化していくのも桧の魅力。年月とともに空間の味わいはだんだんと深まっていきます。
STORY 04
設計者と製材所の「こんな風にできたら…」から生まれた【小幅板風羽目板】。
ある時、設計者の伊礼様より、「小幅板風羽目板を使いたい、ただ桧だと色合いが明るく軽やかな感じになってしまう。今回は落ち着いた空間にしたい。何か良い方法はないか?」というご相談をいただき、塗装なども検討されていたところ、それならばと杉の赤身材で製作。空間にコクを与える、新たなカタチが生まれました。
SEASON02
STORY 05
そんなことで開発した桧の小幅板風羽目板、おかげさまで多くの反響を頂く人気商品になりました。どうしてものっぺりとしがちな桧の木目に溝が入ることで生まれる奥行きと味わいが好まれるようです。
ただ北欧では小幅板にマツなどの濃い樹種が使われるため、そこに近づけるため桧よりも濃い色目を求められるケースが出てきました。代替として杉の赤身を小幅板風加工して対応、ただ木目が粗く色巾も大きい杉ではどうしても小幅板が並んでいるようには見えにくい・・・
また、桧はオイルを塗ると白太部が黄色く、赤身がきついピンクになってしまうため、どうしてもにぎやかな木目になってしまい、小幅に見せる工夫があまり生きてこないことも分かってきました。
そしてコロナ禍によるウッドショック。外材の値上がりが始まり、造作材としてよく使われるベイツガなどの価格も上昇。こういった外材需要を国産材の桧で置き換えることができないか、というのも新たに生まれた問題です。
桧のありのままの表情を無塗装より自然に表現
フラット色は、桧を無塗装のような風合いに仕上げつつ、さらに赤身と白太の色巾をなるべく抑えることを目指した新色です。桧そのものの色味は活かしたいが、全体の色目は落ち着かせたいという場合や、和室の仕上げなどにも最適です。
ベイツガのような落ち着いた色目と木目を表現
グレージュ色は桧に少しベージュ色をのせることでベイツガのような淡い色合いを持たせつつ、全体の木目のばらつきを抑えた新色です。桧素地よりも深い落ち着いた色あいで壁にも天井にも使いやすいニュートラルな色となっています。
飴色になったラーチのような深いブラウン色
ブランジュ色は少し深めのブラウン色を桧にのせることで、北欧建築で使われている飴色になったパインやラーチの風合いを目指した新色です。杉のような色ムラもない深い色合いで、空間に質とコクを与える仕上がりとなります。
絶妙な塗装品を作りました
フラット
グレージュ
ブランジュ
色の個体差を着色塗装でカバー。
新しい色は深く落ち着いた色合い。
塗装品だから現場で手間いらず。
無塗装
無塗装
クリア塗装
スタンダードはこちら。
経年変化を味わえる
無塗装品とクリア塗装品。
兵庫の家
設計:有限会社伊礼智設計室、施工:株式会社越智工務店
桧 小幅板風羽目板 ブランジュ
桜ノ宮の家
設計:株式会社マスタープラン一級建築事務所、
施工:株式会社トクケン
桧 小幅板風羽目板 フラット
兵庫の家
設計:有限会社伊礼智設計室、施工:株式会社越智工務店
桧 小幅板風羽目板 グレージュ