今回のAMASUNAは、建築家であり、株式会社XENCEのCEOでもある小澤巧太郎さんの回。
小澤さんとは、熊野の木でつくった「サーキュラー木造温室™」など、ずっと一緒にものづくりをしてきた仲間です。2026年5月、AMASUNAについてじっくり語り合いました。その対話を、ほぼそのままお届けします。
「価値獲得」という言葉
あんまり言語化したことがなかったんですけど、パッと思いついたワードが「価値獲得」という言葉です。
僕の大学の時の先生で、東京大学 生産技術研究所におられた野城智也(やしろ・ともなり)先生という方が、ずっとイノベーションマネジメントを研究されていました。その先生が「イノベーションって日本語にするのはなかなか難しいよね」と言っていて。
よく「価値創造」と言葉にするけれど、価値創造って厳密にはゼロから一を創造するわけではないんじゃないか、と。どちらかというと「価値獲得」——今まで誰も価値と思っていなかったものを、価値としてみんなに認めさせる、市場の中に出していく。そのことこそがイノベーションなんじゃないか、と。
その言葉が、色んなところに刺さっているんです。
nojimokuさんたちが作っているいい木材は、もうすでに市場の中で価値を獲得している。むしろ、そのプロセスの中に、まだ価値が獲得できていない素材があるというのが、僕の中ではむしろワクワクする瞬間で。
それを、nojimokuさんとのコラボで、しかも僕たちのアイデアで、新しい価値獲得としてやろう、と。そうすれば、結局、森林資源として全体的に生まれる価値は増える。製材所も儲かる。製材所が儲かるということは、僕らもローカルで建設業がより良くなる——みたいなことを実現したい。ただそれだけだなあ、と思います。
つくり続ける生き方——小屋から食卓まで

最近改めて思うのが、僕が祖父と父親と一緒に裏山に入って木を切って小屋を建てたことと、全く同じことを、ただ違う場所で、違う人たちとやっているだけだなあ、ということ。日々そう思っています。
今だと「必要だから何かを作る」「技術があるから何かを作る」って、シーズとかニーズみたいなのをすごく意識するんですけど、別にそんなのはあんまり関係なくて、ライフワークの中で何かを作る、作り続けること自体が自分の生き方の中にすごく価値がある。気持ちがいい。ウェルビーイングの面で価値がある。
かつそれが、ともすれば他の人の価値にもなる、というのがすごい幸せなことで。
たとえば——
森としての価値が落ちてきたから、そろそろ間伐しようかと言って間伐する。
でも間伐した材を置いておくだけだと腐っちゃうし虫が入るから、皮は最低限剥いてほっとこう、と山に置いておく。
二年後ぐらいに「そろそろ乾いたし、小屋でも建てるか」と言って、小屋のニーズがあるわけじゃないけれど小屋を建てる。
「これはできちゃったから農機具小屋にでもするか」と言って農機具を置いて、結果的に美味しいキャベツが出来上がって食卓が彩られる、みたいな。
そんなバランスを日々、新しい人たちとやっているだけ。非常にこう、しょうもない人生を歩んでますね。


ホモ・ファーベル——人は作り続ける生き物である
黒川紀章が、なんかの本の一部で「ホモ・ファーベル(Homo Faber)」という言葉を使っていて。(『ホモ・モーベンス——都市と人間の未来(1969)』黒川紀章)
「ホモ・サピエンス」が「考える人」とよく言われますけれど、もしかしたら「ホモ・ファーベル」——ファブリケーション(fabrication)の語源、ラテン語の「ファーベル(faber、=作る人)」から取ったこの言葉のように、人って作り続ける生き物なんじゃないか、と。
僕はまさにそういうタイプだなと思っていて。別にニーズはないけれど、作り続けて自分の周りの環境を美しく整えることで、自分も整っていく。
その美しく整うためには、やっぱり余るものってあっちゃ駄目——駄目っていうか、そもそも「余り」なんてないんですよね。余っているものだって、そこに存在している以上、全体の一部。使われないまま置かれていると、それ自身も美しくないし、全体のバランスとしても美しくない。だから、全部を使う。
それが産業スケールになると、nojimokuさんとか他の製材所でも、やっぱり余っているものがある。それを美しく使えれば、本当に、日本の木材を使った製造業・建設業が美しくなる、というのが最高に気持ちいいですね。
——ここから先は、五月のあの日の録音のまま。
nojimokuに行くと、なぜ木材に可能性を感じるのか
野地:nojimokuツアーみたいに、来てもらってビフォーアフターというか、解像度が上がった・気づいた、みたいなものってありましたか?
小澤:いや、もう全部ですよ。今話している言葉の8割ぐらいは、野地さんからもらった言葉で使っていると言って過言じゃないです。
具体的に言うと——当たり前に、やっぱり木材というものの多様性というか、非常に複雑なネットワークの中で、森と木材と建築は繋がっているなあ、ということを、本当にいつも野地さんのところに行って思うし、学ぶ。

僕、ずっと製材業を追いかけて、ずっとそれを学んでいるなと思っていて。野地さんの所に行くと、それをワクワク学べる。それはセーザイゲームでもそうだし、良成さんと一緒に製材所を回って木材を見ていてもワクワク学べる。
何だろう、それって。なんでなんだろう。
野地:セーザイゲームもそうですけど、可視化とか言語化ができているからじゃないですかね。何を考えているのかが——もう僕自身が、製材してないんで、製材職人ではないのでそれを言えちゃうんですよね、職人の考えていることを。職人は、自分の技術のことを言葉にできないという難しさがある。その違いかな、とは一つ思います。
資源は「可能性の束」——そして、nojimokuは可能性を演出している
小澤:佐藤仁(さとう・じん)先生という人文学系の先生が、資源についての本を書かれていて。そこで、「資源」という二文字の漢字の意味は「可能性の束である」と書かれているんです。(『「持たざる国」の資源論——持続可能な国土をめぐるもう一つの知』佐藤仁)
でも、僕たちって別にあらゆるものを見て「これの可能性」みたいに考えないじゃないですか、基本。「鉄だな」「石だな」と思うけれど——野地さんのところに行くと、木材に可能性を感じるんですよ。だから、その可能性を演出できる何かがあるんだと思うんですよ、nojimokuは。

野地:可能性、なるほど——今回の回のタイトルは、「可能性をAMASUNA」っていうのが、いいかもしれないですね!
建築のデザインと産業の拡張

「AMASUNA the World」
あますなざわあるど
あますなざわあるど
アマスナザワールド
余すな。座はある。怒!
AMASUNA the World
アマスナザワールド……
あますなざわあるど……
AMASUNA!(ざわーるど!)
AMASUNA!(ざわーるど!)
亜・魔・巣・名・座・輪・亜・流・怒!!
あますなざわあるど
アマスナザワールド!!!!
(AMASUNA the World)
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