社長退任後、あまり会社に来なくなった私の父。
特にこれといった趣味のない父は、毎日家でゴロゴロしていると母が嘆いている。
今日は樹齢100年を超える桧の丸太から、柾ムジフローリング用の原板を製材する日で、どこでその情報を得たのかわからないが朝から製材機の前にスタンバっていた。
8時から仕事がスタートし、かつて毎日座っていた場所で製材している様子をじーっとみている。
時折職人に何かしらの指示をしたり、計算機を使って答え合わせをしてはニヤついたり。
特殊な製品の製材は、それ専用に丸太を仕入れないといけないので、目利きと製材技術が重要となる。
変な丸太を仕入れてしまうと、利益が出ないばかりか、最悪な場合は注文材が取れずにお客様に迷惑をかけてしまう。
逆に目利きが成功し、最高の歩留まりで製材が上手く行った日は思った以上の利益を得られ、この上ない至福の中で旨い酒を飲むことが出来る。
特殊製材とは、緊張と快感の狭間で自分の目利き力を信じて望む、まさにギャンブルだ。
これが父の趣味なのだと思う。
父が楽しそうにしている姿を見るのは僕は好きだ。
特殊製材が活きる注文をもらえるよう、もっと頑張ろうと思う。