nojimokuでは、長男の野地伸卓社長と次男の野地良成専務、二人の兄弟が経営を担っています。
もともと、家業を継ぐことが嫌だったという専務。
大学進学を機に熊野を離れ、外の世界を知ったことで、少しずつ考えが変わっていきました。
現在は生産管理と品質管理を中心に、ものづくりに関わる幅広い業務を担当しています。
数値化が難しい木材の品質基準をどう整えるか。
現場の「ムダ」をどう言語化していくか。
その取り組みは、静かに、でも着実に進んでいます。
今回は、nojimokuの今とこれからについて、専務にじっくりとお話を伺いました。
取材:よしみね(nojimoku社外)
第0話 私の製材所像が壊れた ←よしみねさんとは?

品質基準の統一とマニュアル化への挑戦
──まずは、現在のお仕事についてお聞かせください。
私の仕事は、生産管理と品質管理がメインですが、その他ものづくりに関わる仕事はすべて担当しています。
具体的には、営業が取った注文の納期を決定したり、いつ何を加工するかという生産の段取りを組んだりしています。
また、工場で問題が起こった際のトラブル対応や、営業から上がってくるクレームに対して、工場側と相談しながら原因究明とその対策を考え対応する、といった業務も担っています。
──実に幅広い業務を担当されているのですね。過去のインタビューで、木材の品質管理の難しさについて伺うことがありました。専務から見て、木材ならではの品質管理の難しさはどう感じていらっしゃいますか?
木材というのは見た目が一つひとつ異なるため、基準が結構あいまいです。そのため、何が不良なのかを数値化するのが難しいと感じています。
たとえば強度なら、機械で数値を出すことができますが、木目の綺麗さなどを数値化することはできません。
今でも、作業者個人の頭の中にざっくりと選別基準が入っている状態です。
ただ、加工の品質を安定させるためには、人によるバラつきを統一させていく必要があるため、そのための基準づくりを進めています。
──マニュアル化を進めるには、作業者の方々とコミュニケーションを取る場面も多いと思います。他の方のインタビューの中で「現場から結構怒られた」というお話も伺いましたが、専務が現場に入られた当初はいかがでしたか?
私は経営者の息子として入社したので、失敗が許されやすい環境にあったと思います。
そのため、現場から怒られることは少なく、わからないことがあっても「とりあえずやってみて、失敗して覚える」ということが多かったですね。
誰かに手取り足取り教えてもらうことは、少なかった印象です。
その分、製材の仕方や指示の誤りなどで、父(会長)から怒られることが多かったです。
その一方で、入社当初から会社や父に対して「教える技術」が足りていないな、とも感じていました。
父も職人気質な人間で、「見て覚えろ」という部分が多かったので。
──そうした業界ならではの気質は、入社当時と比べると今はどうですか?
当時と比べると、だいぶ改善されてきたのではないでしょうか。
目指す姿から逆算すると、60〜70%ぐらいまでは進んでいると思います。
残りの課題は、ヒューマンエラー(人為的なミス)を減らしていくことですね。
現場での細かな動き方や、材料をここからここに置くといった配置の部分も含めて、ミスの少ない人と同じ作業が誰でもできるような取り組みを進めています。
「ムダ」をなくすためにきちんと言語化し、マニュアル化していきたいと考えています。

コミュニケーションの工夫と、自分で見出す仕事のおもしろさ
──社内ではさまざまな方と関わると思いますが、コミュニケーション面で気をつけていることはありますか?
年齢や上下に関わらず、誰に対しても基本的には敬語で話すようにしています。また「どう伝えれば相手に伝わるか」を考えながら話すよう心がけています。
工場では、持ち場が変わると従業員同士のコミュニケーションが少なくなりがちです。
設備の音も大きい環境なので、従業員間のコミュニケーションが多く取れるように気を遣っています。
──過去のインタビューで、従業員からの意見や要望が上げやすい環境だと伺いました。経営者目線で見たとき、そのような提案は実際に上がってきていると感じますか?
改善提案が自発的にどんどん上がってくるということは少ないです。どうしても、愚痴みたいなものの方が上がってきやすい印象です。ただ、愚痴が上がってくること自体、悪いことではないと思っています。
──愚痴が専務まで上がるというのは、珍しいですよね。
私があまり怒らない性格だから、みんな言いやすいのかもしれませんね。笑
ただ、会議の場では、白熱していくこともあります。
自分が「こっちの方がいい」と信じていることに対しては考えを曲げたくないので、相手がわかってくれるまで話し合います。
そういう場合は、お互い徐々に声が大きくなってくることもありますね。それでも、怒鳴ることはありません。
ちなみに社長とは、兄弟だということもあり、従業員に対するよりも感情的なぶつかり合いが多いですね。
──長く勤めると、自身の働き方に対してこだわりを持つ方も出てくると思います。仕事のマニュアル化が進むと、「面白さ」や「やりがい」を感じにくくなるという一面もあると感じますが、どうお考えですか?
工場の仕事というのは単純作業が多いので、そもそも面白みが少ないだろうと個人的には思っています。
ただその中で、自分なりの面白みを編み出している方もいます。
仕事って、そういうものじゃないかなと思うんです。
誰かから与えられるやり方ではなく、自分の中で毎日の小さな目標を決めるなど、「自分で考える」ことが大事だと考えています。
私自身も、会社の行動指針を考えるうえで、社員の「自分で考える」力が育つよう心がけています。
──専務から見て、工場のような現場作業にはどのような方が向いていると思いますか?
私は飽きっぽい性格のため、現場作業が苦手です。
工場に入ると、5分おきに時計を見てしまいます。
一方で、どれだけ単調な作業でも、ニコニコしながら一生懸命やっている人もいます。
そういう人たちを見ると、シンプルに「すごいな」と思います。
自分にはできないことをやっているので。
何年か前に、会社から従業員へ特別賞与を支給したことがありました。
たまたまその翌日は会社も休みだったんですが、工場に出てきてずっと一人で掃除をしている年上の従業員がいたんです。
私が話しかけると、おがくずまみれの笑顔で「お金はいらないんで」と言ってくれたんですよ。
それがすごく印象的で。
そういう一生懸命やっている人の姿を見ると、抱きしめたくなるというか、尊いなと感じるんです。
人とのコミュニケーションや自分の頭で考えることが苦手でも、単調だと言われる現場作業を進んで取り組める人たちがいる。
それを踏まえると「どんな人がいいか」を決めるのは難しいですね。

「木が好き」で「ぶっ飛んだ」感性を持つ人材を求めて
──純粋に「木が好き」な方と、木には興味がなくても「自分の人生を変えたい」という方、専務から見てnojimokuに来て欲しいのはどちらのタイプでしょうか?
やはり「木が好き」な人に来て欲しいです。
これは、仕事を覚える速さにも影響する大事な要素だと思っています。
製材の仕事というのは、ときに感性や直感で判断する場面があります。そのため木に興味がないと、その領域に入っていけないのではないかと考えています。
これは、価値観とも言えると思います。木の価値を理解していると、仕事のおもしろさにもつながっていくんじゃないかと。
シンプルに「おもしろいことがしたい」という人も良いですが、木が好きな人の方が、適材適所に当てはまりやすいと思います。
ただ、現場の仕事は体力勝負な面もあるため、場合によっては体を壊して辞めてしまう、ということもあります。
そのため、本人の安全のためにも、面接時には持病の有無について確認するようにしています。
体が元気であれば、年齢はあまり関係ないと考えています。
──社長からは、将来のnojimokuを担う若い人にインタビューしてほしいと依頼を受けています。専務は、若い人にどのような期待をしていますか?
「おもしろいと思う価値観が共有できること」を期待しています。
具体的には、他社がやっていないこと、林業には今までなかったことなどへチャレンジしたいという人に来てもらいたいですね。
特に経験の有無は問いませんが、未経験の方が別の視点で物事を見られると思います。そのため、経験よりも熱意を大事にしています。
熱意があるかどうかは、面接などで「話している時の表情」を見れば大抵わかりますね。
──そうなると「ザ・就活」という人より、多少個性的な人の方が求められているのでしょうか?
個人的には、ちょっと変わっている人やぶっ飛んでいるぐらいの人の方が好きです。ただ、カッチリした人が来たとしても、それはそれで誠実さを感じますし、良いと思います。
過去の面接では、キティちゃんの健康サンダルを履いてきた子がいました。採用には至りませんでしたが、おもしろいなとは思いましたね。
また、岐阜にある林業学校の学生で、卒業発表に「製材した板を吊るしたり立てかけたりして、木を眺めながらお茶を飲む」というコンセプトの木材カフェを開いた子がいました。
「なんでこれをやったの?」と聞いたら、「みんな板を眺めるの好きじゃないですか」と同意を求められて。笑
これはおもしろい感性だなと思いました。
こういう人は、nojimokuに入っても楽しめるんじゃないでしょうか。

熊野の外に出た経験が、家業に対する考えを大きく変えた
──専務ご自身が入社された時、どんな野望を持って入社されたのでしょうか?
もともとは家業を継ぐことが嫌だったので、入社したときには野望はありませんでした。
仕事をしていくなかで、徐々に楽しくなっていったという感じです。
──楽しくなっていったというのは、何かターニングポイントがあったのでしょうか?
転機になったのは、他の製材所の方々と話す機会を得たことでした。
工場で働いていると、外の世界がわからなくなりがちです。ただ私の場合、立場上さまざまな工場を見に行くことができました。
そこで自分たちの考えているアイデアを話すと、すごいキョトンとされるか、大笑いされるかでした。
それが「他の誰も考えていないことだから」だとわかってきたんです。
次第に「nojimokuってすごいね」と評価されることも増えて、この業界なら自分たちでも何とかなるのではないかと思えるようになりました。
──その気付きは、地元である熊野を一度は離れて、外の世界を見てきたという経験が活かされていると感じますか?
そのとおりだと思います。
私は高校生の時まで熊野が嫌いでした。でも大学で初めて都会に出て、自分の考えていることを「おもしろい」と言われたり認めてもらえた経験が、今の自信につながったと感じています。
──新しいことにワクワクしてくれるような方にとって、「おもしろい」と感じてもらえるインタビューを届けられるよう、私たちもがんばります。
まとめ
嫌いだった家業に、気づけば向き合っていた。
特別な覚悟があったわけでも、明確な夢があったわけでもない。仕事をしていくなかで、少しずつ面白くなっていったと言います。
熊野の外に出て、自分たちのやっていることが「他の誰も考えていないこと」だと気づいた経験が、今の自信と業界におけるnojimokuの立ち位置へとつながった専務。
「誰かから与えられるやり方ではなく、自分で考えることが大切」
その言葉は、従業員へ向けたものでもあり、自分自身への問いでもあるように感じました。

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