第3話に登場した東さんご夫妻が勤める、nojimoku配送センターから車で5分ほどの距離にある、飛鳥工場。
杉や桧などの量産型製材工場であるここでは、日々多くの木材が加工されています。
今回、飛鳥工場で25年以上勤める大ベテランの渥美さんにお話を伺いました。
今やnojimokuには欠かせない存在の渥美さんですが、初めは熊野からも遠く離れた地で、今とはまったく異なる仕事をしていました。
それがなぜ、製材の道を志すことになったのか。
長い仕事人生の中で向き合ってきた想いや葛藤について、たっぷり語っていただきました。

自らも手を動かしながら、工場を回す現場責任者
――まずは、渥美さんのお仕事について教えてください。
私は、山あいの集落にある飛鳥工場で働いています。
飛鳥工場の特徴として、並材と呼ばれる節や曲がりなどがある木材を取り扱っています。
私の仕事は、主に外回りと呼ばれる作業です。
リフトを使って材料を運ぶ作業も担当しながら、飛鳥工場全体がうまく回るよう段取りを考えています。
基本は一人作業ですが、実際には半分くらいは誰かとやり取りしながら進めています。
リフト作業をしながら、周囲と声を掛け合って動くイメージですね。
あとは、材料を決められた場所へ運ぶ往復が多いです。
歩く距離がそこそこあるので、合計すると一日の7〜8割くらいは往復しているかもしれません。
慣れていないうちは、きつく感じると思いますが、みんな徐々に慣れていきます。
半年もやれば、だいぶ体もついてくると思います。
――これまでのインタビューでも、熊野の夏と冬は寒暖差が大きく体力的にも厳しいというお話がありました。渥美さんは、暑さや寒さに対していかがですか?
長く勤めているので、さすがにもう慣れましたね。
若い頃は、「着込めば何とかなる」との理由で寒い方が好きでした。
ただ年を重ねるにつれて、気温が高い方が体もよく動くと感じるようになり、今は夏の方が好きです。
夏場の工場は蒸し暑いですが、屋根で直射日光は遮られていますし、工業用の扇風機があれば十分乗り切れます。
――現場で一緒に働いている方は、何名ほどいらっしゃるのでしょうか?
今は7名です。
もともとは10名ほどいましたが、年齢や体力的な理由で少しずつ減っていきました。
内訳は女性が1名、男性が6名で、年齢は30代後半から60代中盤くらいです。
熊野が地元だという人がほとんどですね。
私のように、一度は外に出たものの帰ってきたという方もいます。
――渥美さん自身、熊野へ戻ってきてからの生活に点数をつけるとしたら、何点でしょうか?
70点です。マイナス30点の理由は、賃金ですね。
大阪で働いていたこともあり、都会と比べるとどうしても差を感じます。
ただ、それ以外で大きなマイナスポイントはありません。
私は田舎が好きなので、山に囲まれた環境や自然が身近にあるのがいいですね。
平日の夜でも綺麗な星空が見えるのは、熊野ならではだと思います。
大阪では、星が見えるのは土日の夜くらいでしたから。

異業種から製材所へ。Uターンで選んだ熊野での仕事
――渥美さんは、nojimokuにどれくらいお勤めなのでしょうか?
もう25年以上になりますね。
ただ、はじめからずっと木に関わる仕事をしていたわけではありません。
nojimokuに入社する以前は、製材とまったく関係のない、プラスチックの成形加工をしていました。その会社が大阪にあり、5年ほどで辞めましたが、しばらくは大阪にいました。その後、地元に戻ってきて「何かしよう」と思っていたところでnojimokuに出会い、入社しました。
今でいうUターンですね。
――まったく異なる仕事からの転職ですが、実際に入ってみて「大変だ」と感じたことはありますか?
材木の知識がまったくない状態から始まったので、最初はとにかく覚えることが大変でした。
でも余計な知識がなかった分、素直に全部吸収できたのは良かったのかもしれません。変に知っていると、口出ししてしまいますからね。
ただこうして25年以上この仕事を続けてきましたが、まだ木をマスターしたという実感はありません。
知らないことはまだまだたくさんありますし、私が経験してきたのは飛鳥工場での仕事だけですからね。
本社工場に行けば、また別の知らないこともあると思います。
――仕事を進める上で、苦労したことはありますか?
業務で行う作業の時間配分や動き方は、長く働いてきたことである程度わかっています。
「どれだけ忙しくても、その日の作業はその日のうちに終わらせる」ことをモットーにずっと仕事と向き合ってきたので、作業面で大きな苦労を感じることはありません。
それ以上に、対人関係のほうが大変ですね。
「どうやって人にわかってもらうか」「どうやって動いてもらうか」を考えるのが難しいです。
製材所は職人の世界?時代とともに変わる現場とは
――対人関係のほうが大変とのことですが、どういう場面で難しさを感じるのでしょうか?
自分が伝えたことと、相手が理解したことにズレがあるときですね。
伝えた通りに仕事が進んでいなかったとき、よくよく聞いてみると相手はまったく違う解釈をしていた、ということもありました。
――認識のズレが原因で、仕事の段取りが崩れたり、お客様に迷惑をかけてしまったりしたことはありますか?
材料の数を揃えなければいけないところで揃わなかったり、その前段階である原材料を間に合わせられなかったり、といったことがあります。
その場合は、最終的に納期を遅らせてもらうことになります。
木材は、それぞれ性質が違うので、似たもので代替できるとは限りません。
なかには特殊な注文も多く、普段から取れる材料では対処できないこともあります。
特注になればなるほど、扱う材料も特殊になるため、何か問題が起きた場合は納期調整が必要になります。
――特注が多いnojimokuさんならではの難しさですね。そういうとき、社内ではどんなやり取りをされるのでしょうか?
現場の人よりも、上層部に相談することが多いです。
現場には「次は同じことをしないようにしよう」と伝えるくらいです。起きてしまったことは仕方がないので。
――上層部から厳しく言われることはありますか?
特にありません。何とか対処はしてくれますし、詰められるようなこともないですね。
昔の製材所のイメージだと、ミスしたらすごく怒られる職人の世界、という印象があるかもしれませんが、今のnojimokuにはそういう雰囲気はありません。
先代(現会長)の頃は、いわゆる職人気質の空気が残っていました。
昔のイメージだと、新しい子が入ってきても続かないでしょうね。笑
その点、数年前に飛鳥工場にも30代の女性が入ってきてくれましたから、時代の変化に合わせて会社も変わってきているのだと思います。

大切なのは前後を考えること。nojimokuに向いている人とは
――渥美さんが考える、nojimokuに向いている人についてお聞かせください。
一点集中型も悪くないですが、どちらかというと、マルチに応用力がある人のほうが向いている気がします。
さまざまな人と関わり、納期を調整する仕事なので、前の作業と次の作業を意識して「バトンを渡す」感覚で動ける人が重宝されると思います。
――これまでのインタビューでも、「変化を楽しむ人」「自分で考える人」は楽しめるというお話がありました。渥美さんも同じ考えをお持ちですか?
そうですね。考えて作業できる人には、楽しい職場だと思います。
なかには「言われたことをしっかりやりたい」という人もいますが、次第にその先を求められるようになっていきます。
そのため、言われたことしかできないと、続けていくのは難しいかもしれません。
2〜3年勤めると、「そこまで言わなくても分かるだろう」という場面が出てきますから。
――自分から汲み取っていく姿勢が大切なんですね。仕事をやっていて、改善した方が良い点などについては、日々どのようにやり取りされていますか?
行き詰まっている作業に対して、「なぜこうなったのか」「どうすればよかったのか」を考えさせるようにしています。
下手に答えを言ってしまうと「はい、分かりました。そうします」で終わってしまうので、考えさせなきゃダメですね。
その人なりに考えて、答えを出すこと自体が大事だと思っています。
――これまでのお話を踏まえて、どんな方にnojimokuへ来てほしいですか?
ハキハキして元気な人がいいですね。
工場の中は機械の音が結構うるさいので、声が小さいと周りの音にかき消されてしまうんですよ。
声が聞こえないことで、そこからイライラが始まってしまうかもしれません。笑
声を掛けられたら、元気よく返事をしてほしいですね。
まとめ
渥美さんが一番難しいと話していたのは、『人に分かってもらうこと』『動いてもらうこと』でした。
そこで最後に「どうすれば人を動かせるか、答えは出ましたか?」と尋ねました。
すると、渥美さんは「自分なりに自分が変われば、人も変わると思えるようになった」と答えてくれました。
その気づきのおかげで、少しずつ周りの反応も変わり、居心地がよくなっていったといいます。
若いころは、「人を変えるのは無理。自分を変えないと」と言われながらも、仕事もしんどく「なぜ自分が変わらないといけないんだ」とモヤモヤしていたそうです。
渥美さんは「10年以上かかったと思う」と話していましたが、キャリアを重ねて周りが年下ばかりになる中、自分自身を変えることは簡単ではありません。
それでも、働く一人ひとりが「今よりもっと良くしよう」と考え行動するところから、働きやすい環境が創られていくのだと感じました。

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